悪魔— The Devil
欲望と束縛からの解放
ライダー版の絵柄
コウモリの翼を持つ角の山羊(メンデスの山羊)が祭壇の上に立っています。額には逆さの五芒星。右手を上げていますが、これは教皇の祝福の手を裏返したしぐさです。左手の松明は地に向けられ、祭壇の環から延びた鎖が、角と尾のある裸の男女の首につながっています。
悪魔は角と翼を持つ姿で、欲望・執着・依存を象徴します。鎖につながれた男女は自分で作った束縛から抜けられない状態を示します。
絵柄の説明は、この札を描かせたA. E. ウェイトの『The Pictorial Key to the Tarot』(1910年)の記述をもとにしています。
正位置・逆位置の読み方
このサイトの現代的な読み方
欲望や依存に囚われている時期・悪習慣に気付くべきタイミング。
束縛から解放される時期・悪習慣を断ち切る・気付きの瞬間。
ウェイト(1910年)が挙げた占いの意味(和訳)
- 正位置
- 荒廃、暴力、激しさ、並外れた努力、力、宿命。定められたことだが、だからといって悪とは限らない
- 逆位置
- 悪い宿命、弱さ、卑小さ、盲目
原典の正位置には「定められたことだが、悪とは限らない」という但し書きが付いています。ウェイトは鎖の男女を「恋人」の札の二人に重ね、楽園を追われたあとのアダムとイブのようだと書き、その上に立つ者も「永遠に主人でいられるわけではない」としています。現代の「執着・束縛」の読みはこの図から来ています。
恋愛・仕事・金運・健康での「悪魔」
肉体的な魅力に強く引かれる関係・依存関係・執着。
執着や依存から抜け出すきっかけをつかめる暗示です。逆位置は解放を示すことが多く、自分を縛っていたものに気付く時期と読めます。
収入のために嫌々続けている仕事・惰性・独立を考えるタイミング。
惰性で続けていた働き方や、不本意な契約から離れるきっかけが訪れやすい時期です。気付いたことを一つずつ改善していきましょう。
無駄遣い・借金・物質への執着。
やめたいと思っている習慣に気付くことを促すカードです。一人で抱え込まず、必要に応じて周囲や専門家の力を借りるのも一つの方法です。
自分を縛っているものは何かを見つめる。鎖は自分で外せることに気付く。
No — 誘惑や執着を示すため「No」と読むのが一般的です。その選択が本当に自分のためになるかを見直すよう促しています。
※健康に関する記述は占いとしての読み方です。体調に不安があるときは医療機関にご相談ください。
「悪魔」と組み合わせて読まれる札
黄金の夜明け団の対応
ライダー版の作者ウェイトと画家スミスがともに属した黄金の夜明け団は、大アルカナ22枚をヘブライ文字22字に当て、さらに元素・惑星・星座を割り当てました。悪魔はヘブライ文字のアインと山羊座に対応し、団の文書「Book T」では「物質の門の主、時の力の子」(The Lord of the Gates of Matter: the Child of the Forces of Time)と呼ばれています。星座の性質は山羊座の解説で読めます。
Book Tは巻末で各札の短い意味も挙げており、悪魔は「物質性、物質的な力、物質的な誘惑、とりつかれること」とされています。同じ団の伝統でも、ウェイトの意味の一覧とは重なる語と違う語があります。
番号の15は各桁を足すと6になり、6番「恋人」と組にして読む人もいます(数秘術から借りた現代の読み方です)。同じ数になる札には恋人があります。
参考資料
- A. E. Waite(絵 Pamela Colman Smith)/Wikisource「The Pictorial Key to the Tarot」 ライダー版(ウェイト=スミス版)の作者自身による解説書(1910年)。絵柄の説明と、正位置・逆位置の占いの意味の和訳に使っています。
- Wikipedia(英語版)「Tarot card reading」 エテイヤ、レヴィ、黄金の夜明け団、ライダー版までの占いとしてのタロットの歴史と、大アルカナとヘブライ文字の対応表。
- 黄金の夜明け団「Book T」/Aleister Crowley Timeline(スキャンPDF)「A Description of the Cards of the Tarot(The Equinox Vol. I No. 8, 1912)」 黄金の夜明け団のタロット文書を初めて公にしたもの。各札の称号(「〜の主」など)、数札とデカンの対応表、札ごとの短い意味を訳して使っています。