ᚷGebo (ギューフー)
贈り物、気前のよさ
g のルーン。X の形をした「贈り物」の文字で、ヤンガー・フサルクでは使われなくなったため、ルーン詩では古英語の詩にだけ詠まれています。
名前・音・のちの文字
- 復元名(推定)
- *gebō 「贈り物」
- 音
- /g/
- 英国のフソルク
- ᚷ gyfu(贈り物・気前のよさ)
- 北欧のヤンガー・フサルク
- なし(16文字への整理で廃止)
- ゴート文字の名
- giba
「*」は文献に直接残っていない、言語学上の復元形であることを示します。
古英語 gyfu、ゴート文字の giba から *gebō「贈り物」と復元されます(英語の gift、give と同系)。字形はラテン文字の X を借りたとする説があり、1世紀ごろのラテン語では X の音がゲルマン語の g に近く聞こえた可能性が指摘されています。
英国では発音の変化で ᚷ が /g/ と /j/ の両方を表すようになり、/j/ には gēr ᛄ、/g/ にははっきり区別するため新たに gār ᚸ(「槍」の名を持つ)が作られました。gār はラスウェルの十字架に刻まれた例が知られています。
ルーン詩に詠まれたGebo
気前のよさは人に名声と誉れをもたらし、その品位を支える。ほかに何も持たない落ちぶれた人々すべてに、助けと暮らしの糧を与える。
Gẏfu gumena bẏþ gleng and herenẏs, / ƿraþu and ƿẏrþscẏpe and ƿræcna gehƿam / ar and ætƿist, ðe bẏþ oþra leas.
スカンディナヴィアではヤンガー・フサルク(16文字)への移行で廃止されたため、ノルウェーとアイスランドの詩にはこのルーンの節がありません。
訳はブルース・ディキンズの英訳(1915年)をもとにした当サイトの日本語訳です。原文は Wikipedia 各項目に掲載の校訂テキストによります(一部の特殊文字は簡略化しています)。
現代のルーン占いでの読み方
ここから先は、1982年のラルフ・ブラム『The Book of Runes』以降に広まった現代の占いの読み方です。上の詩のイメージを手がかりにしていますが、古代のゲルマン人がこのように占っていたという記録はありません。
正位置
古英語詩が「気前のよさは誉れとなり、困っている人の糧となる」と詠むとおり、与えることと受け取ること、そこから生まれる結びつきを表します。現代の占いでは契約や協力関係の成立としても読まれます。
注意すべき面(逆位置なし)
X の形は上下を返しても同じなので、逆位置はありません。注意すべき面としては、見返りを前提にした贈り物や、貸し借りがどちらか一方に偏っている関係を示します。
恋愛
互いに何かを差し出し合える関係。言葉にした約束や、小さな贈り物の交換が絆を確かなものにします。
仕事
提携・契約・紹介。条件の釣り合いを確かめてから結ぶと、長く続く関係になります。
フレイのアエットの7番目
同じ組のルーン: ᚠ Fehu・ᚢ Uruz・ᚦ Thurisaz・ᚨ Ansuz・ᚱ Raidho・ᚲ Kenaz・ᚹ Wunjo
よくある質問
Geboの名前の意味はどこまで確かですか?
確度は高いほうです。古英語の gyfu とゴート文字の giba がそろって「贈り物」を指します。
Geboに逆位置はありますか?
ᚷは180度回しても同じ形なので、逆位置として読み分けることはできません。そもそも正位置・逆位置の区別は現代の占いの手法で、古い史料には見られません。
次に読む
- ルーン24文字の一覧 — 3つのアエットと、何が史料に基づき何が現代の解釈かの整理。
- 落下物・くじ占い — タキトゥスが記した木片のくじなど、偶然に意味を読む占いの系譜。
- 北欧・ゲルマンの占い文化 — ルーンのほか、女預言者ヴォルヴァやセイズルの伝承。
- タロット占い — 同じ質問をカードで引き、ルーンの読みと見比べられます。
参考資料
- Wikipedia(英語版)「Gyfu」 Gebo の名前の語源、各地の名と字形の変化、ルーン詩の原文。
- Internet Archive「Runic and Heroic Poems of the Old Teutonic Peoples(Bruce Dickins 編訳、1915年)」 古英語・ノルウェー・アイスランドの3つのルーン詩の原文と英訳。各ページのルーン詩の日本語訳は、この英訳をもとに当サイトが訳したものです。
- Wikipedia(英語版)「Elder Futhark」 24文字の復元名・意味・音価(R. I. Page、M. Barnes の研究に基づく表)、アエットの呼び名、碑文の数と分布、ヴァドステナのブラクテアートの字順。
- Wikipedia(英語版)「Runic magic」 タキトゥス『ゲルマニア』10章の解釈(印がルーンかどうかは決められない)と、ラルフ・ブラム『The Book of Runes』(1982年)以降の現代のルーン占い。