ルーン24文字の意味一覧
ゲルマン諸族が2〜8世紀に刻んだ最古のルーン文字、Elder Futhark(古フサルク)の24文字。各ページでは、名前の由来と音、中世のルーン詩が詠む姿、そして現代の占いでの読み方を、区別して紹介しています。
第1アエット · フレイのアエット
f・u・þ・a・r・k の6文字が「フサルク」という名の由来です。家畜・野牛・騎行・贈り物など、暮らしと家畜にかかわる名が多く並びます。
Fehu (フェオ)
F · *fehu家畜、富、動く財産
ᚢUruz (ウル)
U · *ūruz(または *ūrą)野牛(オーロックス)、または霧雨
ᚦThurisaz (ソーン)
Th · *þurisaz巨人(北欧)、茨(英国)
ᚨAnsuz (オス)
A · *ansuz神(アース神族)、口、言葉
ᚱRaidho (ラド)
R · *raidō騎行、旅、道のり
ᚲKenaz (ケン)
K · *kauną(不確か)松明(英国)、腫れ物(北欧)
ᚷGebo (ギューフー)
G · *gebō贈り物、気前のよさ
ᚹWunjo (ウィン)
W · *wunjō喜び、満ち足りた心
第2アエット · ハガルのアエット
雹・窮乏・氷・実りの年など、天候と季節の名が続きます。ペルトロ(p)とエイワズ(ï)は最初期の碑文に見られず、謎の多い2文字です。
第3アエット · ティールのアエット
神ティールの t から始まり、樺・馬・人・水・イング・日・世襲の地と続きます。最後の d と o の順序は資料によって入れ替わります。
Elder Futhark とは
ルーンはゲルマン諸族が使った文字で、最も古い Elder Futhark(古フサルク)は24文字からなります。名前は最初の6文字 f・u・þ・a・r・k の音から来ています。装身具・武器・道具・石碑などに刻まれた碑文が2〜8世紀にわたって残り、知られている碑文はおよそ350点です。最古級の例は160年ごろのヴィモーセ(デンマーク)の櫛の銘 harja です。
24文字を順に並べた最古の例は、ゴットランド島で1903年に見つかったキュルヴェル石(400年ごろ)です。字形の多くはイタリアの古い文字やラテン文字から取り入れられたと考えられていますが、細部には諸説あります。8世紀末からスカンディナヴィアでは16文字のヤンガー・フサルクに簡略化され、英国ではアングロ・サクソンのフソルクとして文字が増やされました。古フサルクの読み方はいったん忘れられ、1865年にノルウェーのソフス・ブッゲが解読しています。
3つのアエットと呼び名
24文字を8文字ずつ3組に分ける区切りは、6世紀のヴァドステナとマリエダムのブラクテアート(メダル状の装身具)に刻まれた文字列ですでに見られます。組を「アエット」(古ノルド語 ætt、「一族・家系」)と呼ぶのは後世の、ヤンガー・フサルクの言葉で、本来の呼び名は分かっていません。「フレイのアエット」「ハガルのアエット」「ティールのアエット」という名も、現代のルーンの本で使われる慣用的な呼び方です。
何が史料で、何が現代の解釈か
各文字の名前は文字そのものには書かれておらず、主に3つの中世の「ルーン詩」から分かります。8〜9世紀成立の古英語ルーン詩(唯一の写本は1731年の火災で焼失し、1705年刊行の写しが残る)、13世紀の写本(焼失、17世紀の写しが残る)で伝わる古ノルウェー語ルーン詩、1500年ごろの写本が最古の古アイスランド語ルーン詩です。北欧の2詩はヤンガー・フサルクの16文字しか扱わないため、24文字すべてに節があるのは古英語の詩だけです。
北欧の詩にも節があるのはFehu・Uruz・Thurisaz・Ansuz・Raidho・Kenaz・Hagalaz・Nauthiz・Isa・Jera・Eihwaz・Sowilo・Tiwaz・Berkano・Mannaz・Laguzの16文字で、Gebo・Wunjo・Perthro・Algiz・Ehwaz・Ingwaz・Dagaz・Othalaの8文字は古英語の詩にしか出てきません(Eihwaz の欄に入れた北欧の節は、Eihwaz から「イチイ」の名を受け継ぎ、形は Algiz を逆さにした ᛦ ýr についてのものです)。古ゲルマン語の名前(*fehu など)は、これらの詩とゴート文字の名前から言語学的に復元したもので、確かさは文字によって違います。
一方、ルーンを1文字ずつ引いて正位置・逆位置で読む占いは、1982年のラルフ・ブラム『The Book of Runes』とルーンセットの販売から広まった現代の方法で、ブラム自身は解釈に『易経』の解説書を大きく参考にしたと述べています。タキトゥスが記したゲルマン人のくじ占いには、印がルーンだったという記述はありません。このサイトのルーンのページでは、史料に基づく部分と現代の解釈の部分を見出しで分けています。
ページの読み方
- 「名前・音・のちの文字」— 復元名、音価、英国と北欧での名前と字形の変化。
- 「ルーン詩に詠まれた〜」— 各詩の該当する節の日本語訳(ディキンズの英訳から)。
- 「現代のルーン占いでの読み方」— 正位置・逆位置・恋愛・仕事。詩のイメージを手がかりにした現代の解釈です。
逆位置のないルーン
次の9文字は180度回しても同じ形になるため、逆位置として読み分けません。
- ᚷ Gebo (ギューフー)
- ᚺ Hagalaz (ハガル)
- ᚾ Nauthiz (ナウド)
- ᛁ Isa (イス)
- ᛃ Jera (ヤラ)
- ᛇ Eihwaz (ユル)
- ᛊ Sowilo (シゲル)
- ᛜ Ingwaz (イング)
- ᛞ Dagaz (ダエグ)
関連するページ
- 北欧・ゲルマンの占い文化 — ルーンを含む北方の占いの伝統。
- 落下物・くじ占い — 木片や棒を投げて読む占いの世界的な系譜。
- 用語集「Elder Futhark」 — 関連する用語の短い解説。
- タロット占い — 現代のルーン占いが手法を借りたタロットで、同じ質問を占えます。
よくある質問
古代のゲルマン人はルーンで占っていたのですか?
はっきりした証拠はありません。タキトゥス『ゲルマニア』(98年ごろ)10章は、実のなる木の枝を細片に切って印をつけ、白い布の上にまいて3本を拾い上げるくじ占いを記していますが、その印がルーンだったとは書いていません。ルーンを1文字ずつ引いて読む現在の方法は、1980年代以降に広まったものです。
逆位置のないルーンがあるのはなぜですか?
Gebo・Hagalaz・Nauthiz・Isa・Jera・Eihwaz・Sowilo・Ingwaz・Dagazの9文字は、180度回しても同じ形になるため、上下の向きで読み分けることができません。なお、正位置・逆位置を読み分けること自体が現代の手法です。
何も刻まれていない「空白のルーン」は使いますか?
空白のルーンは、ラルフ・ブラムが1982年の本と市販のルーンセットで広めた現代の追加で、ブラムはこれをオーディンのルーンと説明しました。古代の24文字には含まれないため、このサイトでは扱っていません。
参考資料
- Wikipedia(英語版)「Elder Futhark」 24文字の復元名・意味・音価(R. I. Page、M. Barnes の研究に基づく表)、アエットの呼び名、碑文の数と分布、ヴァドステナのブラクテアートの字順。
- Wikipedia(英語版)「Kylver Stone」 24文字を順に並べた最古の例(400年ごろ、ゴットランド島)。1903年の発見と、末尾の木の形の記号。
- Wikipedia(英語版)「Rune poem」 3つのルーン詩の写本(ノルウェーは13世紀、アイスランドは1500年ごろの AM 687 d 4° など)と原文。
- Wikipedia(英語版)「Old English rune poem」 古英語ルーン詩の成立年代、1731年の火災による写本の焼失と1705年刊行の写し、北欧の名との対応表。
- Internet Archive「Runic and Heroic Poems of the Old Teutonic Peoples(Bruce Dickins 編訳、1915年)」 古英語・ノルウェー・アイスランドの3つのルーン詩の原文と英訳。各ページのルーン詩の日本語訳は、この英訳をもとに当サイトが訳したものです。
- The Latin Library「Tacitus: Germania(ラテン語原文)」 10章「実のなる木の枝を細片に切り、印をつけて白い布の上にまく」というくじ占いの記述。
- Wikipedia(英語版)「Runic magic」 タキトゥス『ゲルマニア』10章の解釈(印がルーンかどうかは決められない)と、ラルフ・ブラム『The Book of Runes』(1982年)以降の現代のルーン占い。