風水の流派比較 - 巒頭・理気・八宅・玄空飛星の違いと命卦の出し方

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この記事のポイント

風水の主な流派を、地形を見る巒頭、方位を計る理気、生年の命卦で吉方を出す八宅、20年ごとの元運を入れる玄空飛星に分けて比較します。八宅派の命卦を1990年生まれの男女で実際に計算し、8方位の吉凶を表にしました。

風水の本を何冊か読み比べると、同じ家の同じ方角が、ある本では吉、別の本では凶と書かれていることがあります。どちらかが間違っているとは限りません。流派によって、判断に使う材料そのものが違うからです。地形を見るのか、方位を計るのか、住む人の生まれ年を使うのか、建物ができた時期を使うのか。この記事では、主な流派を「何を材料にするか」で分けて比べ、八宅派の命卦(めいか)の計算を一つの例でたどります。

「風水」の語源とされる『葬書』の一節

「風水」という言葉の出どころとしてよく引かれるのが、『葬書』の次の一節です。

気は風に乗ずれば則ち散じ、水に界せらるれば則ち止まる。古人はこれを聚めて散ぜしめず、これを行かせて止まる有らしむ。故にこれを風水と謂う。

大地を流れる「気」は風に吹かれると散り、水に行き当たると止まるので、風を防いで水のそばに気をとどめる土地が良い、という考え方です。『葬書』は東晋の郭璞(276〜324)の作と伝えられますが、『四庫全書』の提要は「旧本は晋の郭璞の撰と題す」と書いて、郭璞の著作であることに疑問を示しています。書名のとおり、もとは墓所(陰宅)の選び方を説いた書で、住まい(陽宅)の風水はその応用として発達しました。

形を見る巒頭、方位を計る理気

伝統的な風水は、大きく二つの見方に分けて説明されます。

巒頭(らんとう)は「山の形」の意味で、形勢派とも呼ばれます。山並みを龍の流れに見立てて、気が集まる場所(穴)を探し、背後の山、左右の丘、前方の開けた平地(明堂)や川の形で土地を評価します。唐末の楊筠松(楊救貧)が江西で広めたとされ、江西派とも呼ばれます。都市では、山の代わりに背後の高い建物、川の代わりに道路を当てはめて読むのが現代の一般的な使い方です。

理気(りき)は、羅盤(らばん)で建物の向きを測り、八卦・干支・二十四山などの方位の理論で吉凶を判断する見方です。宋代に福建で発達したとされ、福建派とも呼ばれます。後で見る八宅派と玄空飛星派は、どちらもこの理気の系統に入ります。

実際の鑑定では、どちらか一方だけを使うことはまずありません。まず巒頭で外の環境を見て、次に理気で向きや部屋の配置を検討する、という順に組み合わせるのが一般的です。

八宅と玄空飛星は「時間」を入れるかどうかで違う

理気の中でもよく知られる二つの流派を、判断に使う材料で比べると次のようになります。

八宅派 玄空飛星派
住む人の情報 生まれ年と性別から命卦を出す 原則として使わない
建物の情報 坐(背中側)と向(正面側)の方位 坐向の方位と、建てた(入居した)時期の元運
時間による変化 ない(同じ人・同じ家なら吉凶は固定) 20年ごとの元運、さらに年・月ごとに星が動く
結果の形 8方位それぞれの吉凶 九宮に配した数字(飛星)の組み合わせ
向いている問い どの部屋・どの向きがその人に合うか その家がいつ良く、いつ注意が要るか

八宅派は、計算が簡単で個人に合わせた答えが出るため、一般向けの風水本で広く紹介されています。玄空飛星派は、明末清初の蒋大鴻(1616〜1714)が『地理辨正』で玄空の理論を説き、清末の沈竹礽(1849〜1906)の『沈氏玄空学』によって広まりました。『清史稿』は蒋大鴻について、世に伝わる地理書の誤りを正すために『地理辨正』を著し、唐の楊筠松ただ一人を尊んだと記しています。

実例:八宅派の命卦と8方位を出す

八宅派では、生まれ年と性別から命卦を出し、その卦から8方位の吉凶を決めます。年の区切りは元日ではなく立春です。1月1日〜2月3日ごろに生まれた人は、前の年で計算します。

計算は次のとおりです。

  1. 生まれ年(西暦)の4桁の数字をすべて足し、9で割った余りを出す
  2. 男性は「11−余り」、女性は「余り+4」を計算し、9より大きければ9を引く(0になったら9とする)
  3. 結果の数字を八卦に当てる(1坎・2坤・3震・4巽・6乾・7兌・8艮・9離)。5になったときは、男性は2(坤)、女性は8(艮)とする

1990年(立春以後)生まれで計算すると、1+9+9+0=19、19÷9の余りは1です。

  • 男性:11−1=10、9を引いて1=坎
  • 女性:1+4=5、女性の5は8に置き換えて艮

坎・離・震・巽の命卦を「東四命」、乾・坤・艮・兌を「西四命」と呼びます。この例では、男性は東四命、女性は西四命です。なお、男性の命卦の数字は、九星気学の本命星の数字と同じになります(1990年生まれは一白水星)。

命卦が決まると、8方位に4つの吉方と4つの凶方が割り当てられます。

遊年星 伝統的な意味づけ 坎命(1990年生まれ男性) 艮命(1990年生まれ女性)
生気(吉) 活力・発展 南東 南西
天医(吉) 健康・回復 東 北西
延年(吉) 人間関係・長続き 南 西
伏位(吉) 安定 北 北東
禍害(凶) 小さなもめごと 西 南
六殺(凶) 不和・散財 北西 東
五鬼(凶) 災難 北東 北
絶命(凶) 最も重い凶 南西 南東

この表は、命卦の三本の爻(こう)を決まった順に一本ずつ陰陽反転させて作られます。上の爻を反転させた卦の方位が生気で、以下、五鬼、延年、六殺、禍害、天医、絶命と続き、最後に元の卦(伏位)に戻ります。たとえば坎(☵)の上の爻を反転させると巽(☴)になるので、坎命の生気は巽の方位、南東です。

同じ家に住んでいても、この夫婦では吉方がほぼ反対になります。そのため八宅派では、玄関の向きは家の主の命卦に、寝室の位置や枕の向きはそれぞれの人の命卦に合わせる、といった使い分けをします。

九運(2024〜2043年)とは何か

玄空飛星派の土台になっている三元九運は、180年を20年ずつ9つの運に分ける考え方です。直近では、1864年からの180年が一運から九運に当てられています。

元 運 期間
上元 一運〜三運 1864〜1923年
中元 四運〜六運 1924〜1983年
下元 七運〜九運 1984〜2043年

2004〜2023年が八運で、2024年の立春から九運に入りました。九は八卦の離(南・火)に当たるため、九運は「離の運」とも言われます。玄空飛星派では、建物の飛星盤を、その建物が建てられた(または大きく改修された)運で作ります。そのため八運に建った家と九運に建った家では、同じ向きでも判断が変わります。

流派で判断が食い違ったとき

最初に触れたように、流派が違えば判断の材料も違います。そのため結論が食い違うこと自体は珍しくありません。実務では次のように考えるのが一般的です。

  • 外の環境(巒頭)で問題があれば、方位の理論より先にそちらを考える
  • 八宅派と玄空飛星派で判断が分かれたときは、どちらの流派を軸にするかを先に決め、もう一方は参考にとどめる
  • 日本の家相は、鬼門(北東)・裏鬼門(南西)や家の中心からの張り・欠けを重視する独自の体系で、中国の流派とは物差しが違う

風水の主張のうち、日当たり、風通し、水はけ、背後を守られた落ち着きといった部分は、住環境の工夫として理解できます。一方、方位や時期の吉凶は伝統的な判断の体系です。科学的に確かめられたものではないことを踏まえて取り入れるのが無難です。部屋ごとの具体的な工夫は部屋別の風水にまとめています。

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参考文献

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目次

  1. 「風水」の語源とされる『葬書』の一節
  2. 形を見る巒頭、方位を計る理気
  3. 八宅と玄空飛星は「時間」を入れるかどうかで違う
  4. 実例:八宅派の命卦と8方位を出す
  5. 九運(2024〜2043年)とは何か
  6. 流派で判断が食い違ったとき
  7. 関連ページ
  8. 参考文献
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