カップの5
喪失と後悔の時
ライダー版の絵柄
黒いマントをまとった人物が、倒れた三つの杯を横目で見ています。後ろには二つの杯が立ったまま残り、背景には小さな砦へ続く橋が見えます。
絵柄から読むポイント
黒いマントの人物は倒れた三つの杯を見つめていますが、背後には二つの杯が立ったまま残っています。失ったものに気を取られて、残っているものが見えていない札です。失恋や計画の失敗のあとに出たら、悲しむ時間は必要だと認めたうえで、「まだ手元にある二つは何か」を数えます。背後の橋は、戻れる道もあることを示しています。
絵柄の説明は、この札を描かせたA. E. ウェイトの解説書『The Pictorial Key to the Tarot』(1910年)の記述をもとにしています。数の5の一般的な位置づけは「5 — 変化と試練」です。
正位置・逆位置の読み方
このサイトの現代的な読み方
失ったものへの悲しみ・後悔・喪失感。
喪失からの回復・前向きな気持ち・新しい始まり。
正位置では、失ったものへの悲しみや後悔がまだ大きい時期です。気持ちを無理に切り替えようとせず、悲しむ時間を取ってかまいません。逆位置では、背後に残った杯に気づき、立ち直りが始まる状態。原典の逆位置には「帰還・血縁」があり、懐かしい人との再会や、家族の支えが回復を助けると読むこともできます。
ウェイト(1910年)が挙げた占いの意味(和訳)
- 正位置
- 喪失の札だが、何かは残っている。三つは奪われたが二つは残った。相続・遺産・受け渡しの札だが、期待どおりではない。苦さや挫折を伴う結婚の札とする解釈者もいる
- 逆位置
- 知らせ、同盟、親しみ、血縁、祖先、帰還、誤った計画
- 補足の意味
- 正位置「おおむね吉。幸せな結婚、遺産、贈り物、事業の成功」/逆位置「長く会っていない親類の帰還」(同書の巻末「小アルカナの追加の意味」より)
ウェイトは「三つは奪われたが、二つは残る」とはっきり書いています。失ったものだけでなく、背後に残った二つの杯に目を向けるという現代の読み方は、この一文に沿ったものです。
テーマ別の読み方
正位置:失恋・関係の喪失・過去への執着。
逆位置:失恋や喪失の痛みから少しずつ立ち直り、前を向き始める状態です。新しい縁に心を開く準備が整いつつあります。
正位置:プロジェクト失敗・機会喪失・失望。
逆位置:失敗から学び、次の挑戦へ気持ちを切り替えられるときです。残っている強みを確認しましょう。
損失や期待外れの結果に気持ちが引きずられやすい時期です。失ったものより、残っている資源を数え直しましょう。
落ち込みが体のだるさとして出やすいときです。悲しみを無理に抑えず、休息を十分にとりましょう。
残されたものにも目を向ける。過去は学びに。
No — 喪失と後悔を表すため、望んだ形にはなりにくいと読むのが一般的です。
※健康面の読み方は占いとしての目安です。体調に不安がある場合は医療機関に相談してください。
黄金の夜明け団での称号と対応
19世紀末のイギリスの魔術結社・黄金の夜明け団は、タロットの各札に称号を付けていました。その文書(通称「Book T」)は1912年に雑誌『The Equinox』で公にされ、カップの5には「喜びの中の喪失の主」(Lord of Loss in Pleasure)という称号が与えられています。
Book Tがこの札に与えている意味は「喜びの終わり。喜びを期待したものでの失望と喪失。愛の失望、破談、友の不親切」です。どの札もまわりの札との関係で強まったり弱まったりする、と同書は繰り返し断っています。
同じ文書では、2〜10の数札が黄道十二星座を10度ずつに分けた36の「デカン」に割り当てられています。カップの5は蠍座の第1デカンに当たり、そこを受け持つ天体は火星です。
組み合わせの一例
同じ数の札
カップの14枚
カップのスート全体の性格は小アルカナ一覧のカップの項で説明しています。実際に一枚引いてみるならタロット占いをどうぞ。
参考資料
- A. E. Waite(絵 Pamela Colman Smith)/Wikisource「The Pictorial Key to the Tarot」 ライダー版(ウェイト=スミス版)の作者自身による解説書(1910年)。絵柄の説明と、正位置・逆位置の占いの意味の和訳に使っています。
- 黄金の夜明け団「Book T」/Aleister Crowley Timeline(スキャンPDF)「A Description of the Cards of the Tarot(The Equinox Vol. I No. 8, 1912)」 黄金の夜明け団のタロット文書を初めて公にしたもの。各札の称号(「〜の主」など)、数札とデカンの対応表、札ごとの短い意味を訳して使っています。