シナストリーとは?二人のホロスコープの重ね方を計算例で解説|コンポジット・ダビソンとの違い
この記事のポイント
シナストリーは二人の出生ホロスコープを重ねて相性を読む西洋占星術の技法です。架空の二人の天体位置からクロスアスペクトの角度とオーブを実際に計算し、コンポジットの中点の取り方(近い側の中点)、ダビソン・チャートとの違い、読むときの注意までを解説します。
「二人の出生図で太陽と月がたがいに調和する角度にあれば、結婚はたいてい長続きする。」
これは2世紀のギリシアの天文学者プトレマイオスが『テトラビブロス』に書いた考え方を要約したものです。二人のホロスコープを並べて相性を読む方法を、現代の占星術ではシナストリー(synastry)と呼びます。20世紀に生まれた新しい技法と紹介されることもありますが、比べるという発想そのものは古代からありました。
この記事では、シナストリーで何をどう比べるのかを、架空の二人の天体位置を使って実際に計算しながら説明します。ホロスコープの基本(天体・ハウス・アスペクト)はホロスコープの読み方 初心者ガイドにまとめています。
プトレマイオスも比べていた:シナストリーの長い歴史
『テトラビブロス』第4巻第5章「結婚について」では、二人の出生図で太陽と月がトラインやセクスタイルのような調和的な角度にあるとき、とくにそれが二人のあいだで入れ替わる形で成り立つとき、さらに夫の月が妻の太陽とそうした角度にあるとき、結婚は長続きしやすいとされます。反対に、それらが調和しない星座にあったり、オポジションやスクエアの関係にあったりすると、離別や不和が生じやすいと書かれています。第7章「友と敵について」では、二人の太陽・月・アセンダント・幸運のロット(パート・オブ・フォーチュン)の位置を比べ、同じ星座にあるか、たがいの位置を入れ替えるような関係にあると友情が生まれやすい、という読み方が示されています。
20世紀に大きく変わったのは、比べ方の道具と読み方です。二人の天体の中点で1枚の図を作るコンポジット・チャートが生まれ、Liz Greene の『Relating』(1977年)や Stephen Arroyo の『Relationships and Life Cycles』(1979年)のように、関係のなかで自分がどう反応するかを心理学的に読む本も広く読まれるようになりました。
シナストリーで比べるのは2つ
シナストリーで見るのは、主に次の2つです。
- クロスアスペクト:Aさんの天体とBさんの天体のあいだにできる角度。合(0°)、セクスタイル(60°)、スクエア(90°)、トライン(120°)、オポジション(180°)の5つが中心です。角度の考え方はアスペクトの解説も参考にしてください。
- ハウスの重なり(ハウス・オーバーレイ):Bさんの天体が、Aさんの出生図のどのハウスに入るか。こちらはAさんの出生時刻が分かっていることが前提です。
ぴったりの角度でなくても、ある幅(オーブ)の中なら成立するとみなします。オーブの幅は占星術家によって違い、決まった正解はありません。この記事では、合とオポジションは8°、スクエアとトラインは6°、セクスタイルは4°までを目安にします。
計算例:架空の二人のクロスアスペクトを出してみる
ここでは次の二人を例にします。どちらも実在の人物ではなく、説明のための架空の例です。
- Aさん:1995年4月10日 7時30分 東京生まれ(ホロスコープの読み方の例と同じ人物)
- Bさん:1994年12月14日 12時00分 生まれ
天体の位置は、天文計算ライブラリで計算した値(分単位)です。
| 天体 | Aさん | Bさん |
|---|---|---|
| 太陽 | 牡羊座19°36′ | 射手座21°53′ |
| 月 | 獅子座8°57′ | 牡牛座8°53′ |
| 金星 | 魚座15°15′ | 蠍座9°42′ |
| 火星 | 獅子座14°39′ | 乙女座0°22′ |
| 木星 | 射手座15°16′ | 射手座1°01′ |
| 土星 | 魚座19°09′ | 魚座6°43′ |
角度差の出し方
星座と度数のままでは引き算ができないので、牡羊座0°を0°として、円周上の位置(黄経)に直します。牡羊座が0°、牡牛座が30°、双子座が60°…と30°ずつ足していきます。
- Aさんの太陽 牡羊座19°36′ → 19°36′
- Bさんの太陽 射手座21°53′ → 射手座は9番目の星座なので 240° + 21°53′ = 261°53′
差は 261°53′ − 19°36′ = 242°17′ です。円は360°なので、180°を超えたときは反対回りの角度に直します。360° − 242°17′ = 117°43′。トライン(120°)との差は 2°17′ で、目安の6°以内なので「トライン、オーブ2°17′」と読みます。
結果の一覧
同じ手順で、太陽・月・金星・火星を中心に主な組み合わせを計算すると次のようになります。
| Aさん | Bさん | 黄経の差 | 角度 | 判定 | オーブ |
|---|---|---|---|---|---|
| 太陽 19°36′ | 太陽 261°53′ | 242°17′ → 117°43′ | 120° | トライン | 2°17′ |
| 木星 255°16′ | 太陽 261°53′ | 6°37′ | 0° | 合 | 6°37′ |
| 土星 349°09′ | 太陽 261°53′ | 87°16′ | 90° | スクエア | 2°44′ |
| 月 128°57′ | 月 38°53′ | 90°04′ | 90° | スクエア | 0°04′ |
| 月 128°57′ | 金星 219°42′ | 90°45′ | 90° | スクエア | 0°45′ |
| 金星 345°15′ | 金星 219°42′ | 125°33′ | 120° | トライン | 5°33′ |
| 火星 134°39′ | 金星 219°42′ | 85°03′ | 90° | スクエア | 4°57′ |
| 火星 134°39′ | 月 38°53′ | 95°46′ | 90° | スクエア | 5°46′ |
| 金星 345°15′ | 火星 150°22′ | 194°53′ → 165°07′ | 180° | 不成立 | 14°53′ |
最後の行は、オポジション(180°)からの差が14°53′あり、目安の8°を大きく超えるのでアスペクトとは数えません。
伝統的な読み方
占星術の伝統に沿って読むと、たとえば次のようになります。
- 太陽どうしのトライン:人生の方向性や自己表現のスタイルが響き合いやすい、と読まれる組み合わせです。
- Aさんの木星とBさんの太陽の合:Aさんの木星がBさんの太陽を「広げる・励ます」形とされ、BさんがAさんといると前向きになりやすい、と読む人が多い配置です。ただしオーブは6°37′と広めです。
- Aさんの土星とBさんの太陽のスクエア:Aさんが責任感や慎重さから、Bさんにブレーキをかける側に回りやすい、と読まれます。関係に重みや持続性をもたらす配置と読む流派もあります。
- 月どうしのスクエア(ほぼぴったり):気分の波や安心できる過ごし方が食い違いやすい、とされます。オーブがきわめて小さいので、この例ではいちばん目立つ配置です。
- Aさんの火星とBさんの金星のスクエア:金星と火星のクロスアスペクトは、伝統的に惹かれ合いの指標とされます。スクエアの場合は、惹かれ合いと衝突が同時に出やすいと読みます。
調和的な角度(トライン)と緊張をはらむ角度(スクエア)が混ざっているのは、どの二人を比べてもふつうのことです。今の占星術では、スクエアを「悪い相性」と決めつけず、話し合いのきっかけになる違いとして読むのが一般的です。
ハウスの重なり
Aさんのアセンダントは双子座2°41′です。前の記事と同じホールサイン方式(アセンダントの星座を第1ハウスとし、星座ごとに1ハウス)で数えると、射手座はAさんの第7ハウスにあたります。つまりBさんの太陽はAさんの第7ハウスに入ります。
第7ハウスは「一対一の関係・パートナー」の分野とされるため、伝統的には、相手を対等なパートナーとして意識しやすい配置と読まれます。ただし「結婚しやすい」と言い切れるものではなく、ハウスの方式を変えると結果が変わることもあります。ほかに、Bさんの月はAさんの第12ハウス(牡牛座)、金星は第6ハウス(蠍座)、火星は第4ハウス(乙女座)に入ります。
コンポジット:二人の中点で1枚の図を作る
コンポジット・チャートは、二人の同じ天体どうしの中点を取り、それを並べて1枚の図にする方法です。中点を使う考え方は1920年代ドイツのハンブルク学派までさかのぼり、二人の関係を1枚の図にする方法としては、John Townley が1973年に本にまとめ、Robert Hand の『Planets in Composite』(1975年)で広く知られるようになりました。シナストリーが「二人がたがいにどう作用するか」を見るのに対し、コンポジットは「二人の関係そのもの」を一つの存在として読む、と説明されます。
中点は「近い側」を取る
中点の計算で注意したいのは、円の上では中点が2つあることです。さきほどの太陽で計算してみます。
- 黄経を足して2で割る:(19°36′ + 261°53′) ÷ 2 = 281°29′ ÷ 2 = 140°44.5′(獅子座20°44.5′)
- ところが、二人の太陽の差は242°17′で180°を超えています。このとき単純な平均は、二人の太陽から遠い側の中点になります。
- 近い側の中点は180°反対側なので、140°44.5′ + 180° = 320°44.5′(水瓶座20°44.5′)
確かめると、Bさんの太陽(261°53′)から320°44.5′までが58°51.5′、320°44.5′からAさんの太陽(19°36′ = 379°36′)までも58°51.5′で、ちょうど真ん中です。コンポジットでは、この近い側の中点を使うのが一般的です。
月は差が90°04′で180°未満なので、単純な平均でかまいません。(128°57′ + 38°53′) ÷ 2 = 167°50′ ÷ 2 = 83°55′(双子座23°55′)です。
コンポジットの太陽(水瓶座20°44.5′)と月(双子座23°55′)の差は 320°44.5′ − 83°55′ = 236°49.5′ → 360°から引いて123°10.5′ で、オーブ3°10.5′のトラインになります。どちらも風の星座で、伝統的には、会話や情報のやりとりを軸にした関係と読まれる組み合わせです。
ダビソン・チャート:時間と場所の中間で作る図
コンポジットとよく比べられるのが、Ronald C. Davison が考案したダビソン・チャートです。二人の天体の中点を並べるのではなく、二人の生年月日時の中間の日時と、二つの出生地の中間の地点を求め、その日時・場所で実際にホロスコープを作ります。Davison は1977年の著書『Synastry』でこの方法を示したとされ、同書は現在 Aurora Press 版で読まれています。
ダビソン・チャートは実在する空の配置なので、天体どうしの位置関係に無理がありません。一方、コンポジットの中点は計算上の点なので、太陽と水星が実際にはありえないほど離れることもあります。どちらを使うかは占星術家によって分かれます。
読むときに気をつけたいこと
- 出生時刻:月は1日に約12〜13°動きます。Bさんの出生時刻が分からず0時と24時の範囲で考えると、月の位置は約6°前後ずれ、この例の月どうしのスクエアも成り立つかどうかが変わります。時刻が分からないときは、月の配置とハウスは参考程度にとどめます。
- 動きの遅い天体:天王星・海王星・冥王星は数年にわたって同じ星座にあるため、年の近い二人では似た位置になりがちです。個人どうしの相性としては、太陽・月・水星・金星・火星のほうが重く見られます。
- 一つの配置で決めつけない:シナストリーは、相性の良し悪しを判定する道具というより、二人の違いがどこに出やすいかを考えるための見取り図です。占いの結果を理由に、交際や結婚などの大切な決定を一つに絞り込む必要はありません。
星座・数秘術・干支など、ほかの相性占いとの違いは相性占いの種類まとめで比べています。太陽星座どうしの相性を手軽に見たいときは星座相性診断も使えます。
参考文献
- Ptolemy, Tetrabiblos, ed. and trans. F. E. Robbins, Loeb Classical Library, Harvard University Press, 1940. 第4巻第5章 Of Marriage・第7章 Of Friends and Enemies. https://penelope.uchicago.edu/Thayer/E/Roman/Texts/Ptolemy/Tetrabiblos/4B*.html
- Robert Hand, Planets in Composite: Analyzing Human Relationships, Para Research, 1975.
- Liz Greene, Relating: An Astrological Guide to Living with Others on a Small Planet, 1977(Weiser ほか).
- Stephen Arroyo, Relationships and Life Cycles: Modern Dimensions of Astrology, 1979(改訂第2版 CRCS Publications, 1993).
- Ronald C. Davison, Synastry: Understanding Human Relations Through Astrology, Aurora Press, 1983(改訂版).
- Sue Tompkins, Aspects in Astrology: A Guide to Understanding Planetary Relationships in the Horoscope, 1989.
- The Astrology Podcast, "Composite Charts, with Originator John Townley," 2017. https://theastrologypodcast.com/2017/10/13/composite-charts-with-originator-john-townley/
- Astrodienst, Relationship Charts(コンポジットとダビソンの説明). https://www.astro.com/prod/pr_relation_e.htm
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