SUKUYO 17 · Mūla

尾宿びしゅく

ナクシャトラムーラ 七種の分類毒害宿 四方七宿東方青龍

尾宿は、宿曜経が昴宿から数える27宿の17番目の宿です。経は「尾は二つの星で、形は獅子のたてがみのよう。儞律神(ニルリティの音写)の宿」と説きます。 以下、経は宿曜経の本文と訳、現代は当サイトによる現代的な読み方です。

経尾宿に生まれた人

此宿生人,法合足衣食、多庫藏。性慳澁、志惡戾諍競,合得外財力,性愛花藥

衣食に不自由せず、蔵が多い。物惜しみする性質で、気が荒く争いを好む。外から財や力を得る。花や薬草を愛する。

庫藏
倉、蓄え
慳澁
物惜しみする
諍競
争う
花藥
花や薬草

経尾宿の日に向くこと

此宿直日,宜沐浴、厭呪、置宅、種樹、合藥、散阿伽陀藥并入壇並吉

沐浴、まじないによる祓い、住まいを定める、木を植える、薬の調合、阿伽陀薬(万能薬とされた薬)を施す、壇に入ることに吉。

経は各宿の日に衣を裁つとどうなるかも記しています。尾宿の日は「若用裁衣,必遭爛壞」——この日に衣を裁つと、腐って傷む。

巻下の吉凶暦では

尾宿,宜作服著事,蒔樹種根及取煎吉。又宜剛嚴事,洗浴、除滅壓呪、種押蒲桃甘蔗、置宅置藏、作愛喜事、合湯及散阿伽陀藥,并壇場事並吉

衣を着る事、木や根のある植物を植える、煎じ物に吉。強硬な事、沐浴、まじないで災いを祓う、葡萄やサトウキビを植えて搾る、家や蔵を定める、喜び事、湯薬や阿伽陀薬の調合、壇場の事にも吉とします。

経毒害宿としての尾宿

経は27宿を性質で七種に分けています。尾宿は毒害宿(どくがいしゅく)で、 同じ組は参宿・柳宿・心宿です。 この組に生まれた人について経は「法合磣毒、剛猛惡性」(毒気があり、気性が荒く激しい)と書きます。

毒害宿の日は、城を囲む、敵陣を破る、賊を討つ、狩猟など、攻める事柄に向くとされる。

経ほかの章に出てくる尾宿

七曜との組み合わせ

  • 火曜日の尾宿は甘露日 — 大吉祥の日。即位や灌頂、寺の建立、受戒、経を学ぶ、出家修道によい
  • 日曜日の尾宿は金剛峯日 — 魔や敵を降伏させる修法、日天子の真言、護摩など強い事によい日

同じ尾宿でも、曜日によって正反対の日になることがあります。

本命宿がわからない人の宿

巻上は、生まれた月日を覚えていない人が訪ねてきたら、その人が最初に触れた体の部位で宿を決めよ、と説きます。尾宿にあたるのは「みぞおちの骨のあたり」です。

若觸心脾骨者則合屬尾宿

七曜が犯すと災いがあるとされる宿

同じ章は、七曜(日・月と五惑星)が自分の命宿のほか、命宿から数えて4・10・13・16・20番目の宿に入ると災いがあるとします。尾宿生まれの場合は 事宿が婁宿(災いを招く)、意宿が女宿(憂いや苦しみが多い)、聚宿が井宿(財を失い、囚われる)、同宿が張宿(家族が離れ、家が衰える)、克宿が畢宿(財や官職を失い、勢いが衰える)です。

経楊景風の注 — 中国の星座との違い

中國天文,尾九星,主後宮士,東方之宿也

中国の天文では尾は九星(さそりの尾の曲線)で、後宮を司る東方の宿。

出典:『宿曜経』巻上「宿曜暦経序日宿直所生品第二」(大正新脩大蔵経 第21巻 p.389c25–390a01、CBETA のテキストによる)。現代語訳は当サイトによる大意です。

星空での位置と対応

ナクシャトラ
Mūla(ムーラ)— 名の意味は「根」
インドでの神格
ニルリティ(破滅の女神)。経の「儞律」はニルリティの音写と見られ、一致します。
対応する星
さそり座の尾(ε〜ν星)
二十八宿として
和名は「あしたれぼし」。さそり座尾部にあたり、距星(宿の基準星)はさそり座μ星。東方青龍の七宿の一つ
十二宮への配当
弓宮4足(経の「分定宿直品第一」による。1宮を9足、1宿を4足に分ける)

ナクシャトラは黄道を13°20′ずつ27等分した区画で、中国の不等間隔な二十八宿とは同じ星を指すとは限りません。名の意味・神格・星は英語版 Wikipedia「Nakshatra」の一覧、距星は日本語版 Wikipedia「二十八宿」の表によります。

現代尾宿の読み方

名は「根」、星はさそりの尾。経の人物像は、衣食と蔵に恵まれる豊かさと、物惜しみ・争い好きという気性の荒さ、そして「花や薬草を愛する」という意外な一面が並びます。この宿の日も、木を植える・薬を調合するなど植物と薬に関わる事に向くとされます。現代的には、根を張るように蓄え、譲れないものは譲らないが、草木を育てる細やかさも持つ人と読めます。

尾宿の日を今の暮らしに置き換えると

沐浴、まじない、木を植える、薬の調合、住まいを定めるといった事の日。植物の植え付けや、体調を整えるセルフケア、住まいの整理に向く日と読めます。衣を裁つのは不向きです。

経の人物描写は唐代の暦占の言葉で、性格を断定するものではありません。この段落は当サイトが経の記述をもとに書いた解釈です。

尾宿から見た三九の秘法

自分の宿を「命」として27宿を順に数え、9宿ずつ三巡させたときの位置で関係を決めるのが三九の秘法です(しくみは一覧ページ)。 経は相手と交わるとき「栄・安・成・友・親を善とし、交わってよい。それ以外はみな悪い」としており、尾宿から見てこれにあたるのは15宿です。

栄えい 張宿・箕宿・胃宿
衰すい 昴宿・翼宿・斗宿
安あん 畢宿・軫宿・女宿
危き 觜宿・角宿・虚宿
成せい 参宿・亢宿・危宿
壊かい 井宿・氐宿・室宿
友ゆう 鬼宿・房宿・壁宿
親しん 柳宿・心宿・奎宿
業ごう 婁宿
胎たい 星宿

色の付いた行が、経が「交わってよい」とする関係です。その宿の日に何をするとよいかや、現代の「栄親」「安壊」などの組み合わせでの読み方は一覧ページにまとめています。

尾宿生まれになる旧暦の日

本命宿は、旧暦の各月1日に決まった宿を置き、1日ごとに次の宿へ進めて決めます(閏月は同じ数の月と同じ)。尾宿にあたるのは次の日です。

  • 正月22日
  • 二月20日
  • 三月18日
  • 四月16日
  • 五月14日
  • 六月12日
  • 七月9日
  • 八月6日
  • 九月4日
  • 十月2日・29日
  • 十一月26日
  • 十二月24日

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参考資料