SUKUYO 03 · Mṛgaśiras

觜宿ししゅく

ナクシャトラムリガシラス 七種の分類和善宿 四方七宿西方白虎

觜宿は、宿曜経が昴宿から数える27宿の3番目の宿です。経は「觜は三つの星で、形は鹿の頭のよう。月の神の宿」と説きます。 以下、経は宿曜経の本文と訳、現代は当サイトによる現代的な読み方です。

経觜宿に生まれた人

此宿生人,法合有名聞景行、美容貌、心肚慎淨、愛服藥必得力、心口隱密舉動不輕燥,為人好法、用愛禮儀

評判がよく行いが立派で、容貌が美しい。心は慎み深く清らか。薬を好んで飲めばよく効く。胸の内も口も秘密を守り、軽はずみな振る舞いをしない。教えを好み、礼儀を重んじる。

景行
立派な行い
心肚
胸の内
隱密
秘密を守る
輕燥
軽はずみ、落ち着きがない

経觜宿の日に向くこと

此宿直日,宜作舍屋及造旌纛、床帳家具、入新宅、嫁娶、沐浴裝束、入壇祭星曜除災害吉

家を建てる、旗や幟を作る、寝台・帳・家具を作る、新居に入る、嫁取り、沐浴して身支度をする、壇に入って星を祭り災いを除くことに吉。

経は各宿の日に衣を裁つとどうなるかも記しています。觜宿の日は「此日裁衣,被鼠咬」——この日に衣を裁つと、鼠にかじられる。

巻下の吉凶暦では

觜宿,作急要事及和善事並吉。宜種蒔白汁樹草等,又宜王者作舍作纛床座,又入新宅、嫁娶、修理髮、洗浴,作求吉勝法、著新衣、嚴飾、作喜樂、調畜生,作除災謹身呪術壇場之法,祭星曜、作髻並吉

急ぎの事にも穏やかな善事にも吉とし、白い樹液の出る木や草を植える、王が家や旗や座を作る、髪を整えて洗う、新しい衣、祝いの楽しみ、家畜の調教、災いを除き身を慎むまじないの壇、星を祭る、髷を結うことを挙げます。

経和善宿としての觜宿

経は27宿を性質で七種に分けています。觜宿は和善宿(わぜんしゅく)で、 同じ組は角宿・房宿・奎宿です。 この組に生まれた人について経は「法合柔軟溫良,聰明而愛典教」(物腰が柔らかく温和で善良、聡明で経典や教えを好む)と書きます。

和善宿の日は、道場に入る、技芸を学ぶ、真言を習う、斎戒、灌頂、音楽、慶事、求婚、君主や高官への面会、服薬などに向く。

経ほかの章に出てくる觜宿

七曜との組み合わせ

経はその日の曜日(七曜)と宿の組み合わせで甘露日・金剛峯日・羅刹日を定めていますが、觜宿はこのどれにも挙がっていません。

本命宿がわからない人の宿

巻上は、生まれた月日を覚えていない人が訪ねてきたら、その人が最初に触れた体の部位で宿を決めよ、と説きます。觜宿にあたるのは「眉」です。

若先觸眉者則屬觜宿

七曜が犯すと災いがあるとされる宿

同じ章は、七曜(日・月と五惑星)が自分の命宿のほか、命宿から数えて4・10・13・16・20番目の宿に入ると災いがあるとします。觜宿生まれの場合は 事宿が角宿(災いを招く)、意宿が鬼宿(憂いや苦しみが多い)、聚宿が箕宿(財を失い、囚われる)、同宿が危宿(家族が離れ、家が衰える)、克宿が房宿(財や官職を失い、勢いが衰える)です。

経楊景風の注 — 中国の星座との違い

中國天文,觜三星,主軍之士,西方之宿也

中国の天文でも觜は三星で、軍の兵士を司る西方の宿。

出典:『宿曜経』巻上「宿曜暦経序日宿直所生品第二」(大正新脩大蔵経 第21巻 p.388c22–c28、CBETA のテキストによる)。現代語訳は当サイトによる大意です。

星空での位置と対応

ナクシャトラ
Mṛgaśiras(ムリガシラス)— 名の意味は「鹿の頭」
インドでの神格
ソーマ(月の神)。経の「月神」はソーマにあたり、一致します。
対応する星
オリオン座λ星・φ星
二十八宿として
和名は「とろきぼし」。オリオン座頭部にあたり、距星(宿の基準星)はオリオン座λ星。西方白虎の七宿の一つ
十二宮への配当
牛宮2足・婬宮2足(経の「分定宿直品第一」による。1宮を9足、1宿を4足に分ける)

ナクシャトラは黄道を13°20′ずつ27等分した区画で、中国の不等間隔な二十八宿とは同じ星を指すとは限りません。名の意味・神格・星は英語版 Wikipedia「Nakshatra」の一覧、距星は日本語版 Wikipedia「二十八宿」の表によります。

現代觜宿の読み方

サンスクリット名「鹿の頭」と経の「形如鹿頭」が一致する、対応のわかりやすい宿です。人物像は「口が堅く、軽はずみに動かない」「礼儀を重んじる」が中心で、言葉が多いというより、言うべきことを選ぶ慎重さが強調されています。和善宿の一つで、この宿の日は家づくり・婚礼・身支度・星祭りといった、場を整える事柄に向くとされます。

觜宿の日を今の暮らしに置き換えると

家づくり、新居、婚礼、身支度、星祭りと「場を整える」用事が並びます。引っ越しの片付け、衣替え、身だしなみを整えて人に会う、といった用事に重ねやすい日です。

経の人物描写は唐代の暦占の言葉で、性格を断定するものではありません。この段落は当サイトが経の記述をもとに書いた解釈です。

觜宿から見た三九の秘法

自分の宿を「命」として27宿を順に数え、9宿ずつ三巡させたときの位置で関係を決めるのが三九の秘法です(しくみは一覧ページ)。 経は相手と交わるとき「栄・安・成・友・親を善とし、交わってよい。それ以外はみな悪い」としており、觜宿から見てこれにあたるのは15宿です。

栄えい 参宿・亢宿・危宿
衰すい 井宿・氐宿・室宿
安あん 鬼宿・房宿・壁宿
危き 柳宿・心宿・奎宿
成せい 星宿・尾宿・婁宿
壊かい 張宿・箕宿・胃宿
友ゆう 昴宿・翼宿・斗宿
親しん 畢宿・軫宿・女宿
業ごう 角宿
胎たい 虚宿

色の付いた行が、経が「交わってよい」とする関係です。その宿の日に何をするとよいかや、現代の「栄親」「安壊」などの組み合わせでの読み方は一覧ページにまとめています。

觜宿生まれになる旧暦の日

本命宿は、旧暦の各月1日に決まった宿を置き、1日ごとに次の宿へ進めて決めます(閏月は同じ数の月と同じ)。觜宿にあたるのは次の日です。

  • 正月8日
  • 二月6日
  • 三月4日
  • 四月2日・29日
  • 五月27日
  • 六月25日
  • 七月22日
  • 八月19日
  • 九月17日
  • 十月15日
  • 十一月12日
  • 十二月10日

生年月日から本命宿を計算する →

次に読む

参考資料