SUKUYO 22 · Śatabhiṣaj

危宿きしゅく

ナクシャトラシャタビシャジ 七種の分類軽躁宿(行宿) 四方七宿北方玄武

危宿は、宿曜経が昴宿から数える27宿の22番目の宿です。経は「危は一つの星で、形は花の穂のよう。婆魯拏神(ヴァルナの音写)の宿」と説きます。 以下、経は宿曜経の本文と訳、現代は当サイトによる現代的な読み方です。

経危宿に生まれた人

此宿生人,法合嗜酒耽婬、耐辛苦、心膽硬,與人結交必不久長、無終始。又能處分事務、解藥性、多嗔

酒色を好み、辛苦に耐え、肝がすわっている。人と交わっても長続きせず、始めと終わりが一貫しない。事務をさばく力があり、薬の性質に通じ、怒りっぽい。

耽婬
色にふける
心膽硬
肝がすわっている
無終始
始めと終わりが一貫しない
解藥性
薬の性質を理解する

経危宿の日に向くこと

此宿直日,宜合藥避病、穿池種麻、商人出行、納財、造船、醞酒並吉

薬を調合して病を避ける、池を掘り麻を植える、商人の旅立ち、財を納める、船を造る、酒の仕込みに吉。

経は各宿の日に衣を裁つとどうなるかも記しています。危宿の日は「若用裁衣,心遭毒厄」——この日に衣を裁つと、毒の災いに遭う。

巻下の吉凶暦では

危宿,宜合藥、取藥、服藥並大吉

薬を調合し、手に入れ、飲むことはいずれも大吉。悪を破る厳しい事、川や池を掘り麻や豆を植える、商人を送り出す、財を納める、役人を置く、医者を招く、蔵を置く、船を造る、酒の仕込み、売買にも吉で、財を出すことだけは不可とします。巻上・巻下とも薬の宿として描かれています。

経軽躁宿(行宿)としての危宿

経は27宿を性質で七種に分けています。危宿は軽躁宿(行宿)(けいそうしゅく)で、 同じ組は井宿・亢宿・女宿・虚宿です。 この組に生まれた人について経は「法合澆薄,不然則質直平穩」(人情に薄い。そうでなければ、飾り気がなく穏やかである)と書きます。

軽躁宿(行宿)の日は、象や馬に乗る、舟で川を渡る、使者として遠方へ行く、礼楽、閲兵、種まき、酒造り、薬の調合など、動く事柄に向く。

経ほかの章に出てくる危宿

七曜との組み合わせ

経はその日の曜日(七曜)と宿の組み合わせで甘露日・金剛峯日・羅刹日を定めていますが、危宿はこのどれにも挙がっていません。

本命宿がわからない人の宿

巻上は、生まれた月日を覚えていない人が訪ねてきたら、その人が最初に触れた体の部位で宿を決めよ、と説きます。危宿にあたるのは「股と尻」です。

觸胯腿及後分者則屬危宿

七曜が犯すと災いがあるとされる宿

同じ章は、七曜(日・月と五惑星)が自分の命宿のほか、命宿から数えて4・10・13・16・20番目の宿に入ると災いがあるとします。危宿生まれの場合は 事宿が参宿(災いを招く)、意宿が奎宿(憂いや苦しみが多い)、聚宿が翼宿(財を失い、囚われる)、同宿が氐宿(家族が離れ、家が衰える)、克宿が柳宿(財や官職を失い、勢いが衰える)です。

経楊景風の注 — 中国の星座との違い

中國天文,危三星,主墳墓,北方之宿也

中国の天文では危は三星で、墳墓を司る北方の宿。

出典:『宿曜経』巻上「宿曜暦経序日宿直所生品第二」(大正新脩大蔵経 第21巻 p.390b06–b11、CBETA のテキストによる)。現代語訳は当サイトによる大意です。

星空での位置と対応

ナクシャトラ
Śatabhiṣaj(シャタビシャジ)— 名の意味は「百人の医者」
インドでの神格
ヴァルナ(天の水の神)。経の「婆魯拏」はヴァルナの音写で、一致します。
対応する星
みずがめ座λ星
二十八宿として
和名は「うみやめぼし」。みずがめ座の一部・ペガスス座頭部にあたり、距星(宿の基準星)はみずがめ座α星。北方玄武の七宿の一つ
十二宮への配当
瓶宮4足(経の「分定宿直品第一」による。1宮を9足、1宿を4足に分ける)

ナクシャトラは黄道を13°20′ずつ27等分した区画で、中国の不等間隔な二十八宿とは同じ星を指すとは限りません。名の意味・神格・星は英語版 Wikipedia「Nakshatra」の一覧、距星は日本語版 Wikipedia「二十八宿」の表によります。

現代危宿の読み方

サンスクリット名は「百人の医者」。経の人物像にも「解薬性(薬の性質に通じる)」とあり、この宿の日も薬の調合に向くとされるなど、薬と医の連想が東西で重なる宿です。水の神ヴァルナの宿らしく、池・船・商人の旅立ちといった水と移動の事柄も並びます。人間関係が長続きしにくいとされる一方、事務をさばく力は認められています。現代的には、専門知識と実務能力があり、付き合いはさっぱりしている人と読めます。

危宿の日を今の暮らしに置き換えると

薬の調合と服用が大吉、池を掘る、船を造る、商人の旅立ちにも吉とされる日。通院や常備薬の見直し、出張の出発に当てはめられます。お金を出すことだけは避ける日です。

経の人物描写は唐代の暦占の言葉で、性格を断定するものではありません。この段落は当サイトが経の記述をもとに書いた解釈です。

危宿から見た三九の秘法

自分の宿を「命」として27宿を順に数え、9宿ずつ三巡させたときの位置で関係を決めるのが三九の秘法です(しくみは一覧ページ)。 経は相手と交わるとき「栄・安・成・友・親を善とし、交わってよい。それ以外はみな悪い」としており、危宿から見てこれにあたるのは15宿です。

栄えい 井宿・氐宿・室宿
衰すい 鬼宿・房宿・壁宿
安あん 柳宿・心宿・奎宿
危き 星宿・尾宿・婁宿
成せい 張宿・箕宿・胃宿
壊かい 昴宿・翼宿・斗宿
友ゆう 畢宿・軫宿・女宿
親しん 觜宿・角宿・虚宿
業ごう 参宿
胎たい 亢宿

色の付いた行が、経が「交わってよい」とする関係です。その宿の日に何をするとよいかや、現代の「栄親」「安壊」などの組み合わせでの読み方は一覧ページにまとめています。

危宿生まれになる旧暦の日

本命宿は、旧暦の各月1日に決まった宿を置き、1日ごとに次の宿へ進めて決めます(閏月は同じ数の月と同じ)。危宿にあたるのは次の日です。

  • 正月27日
  • 二月25日
  • 三月23日
  • 四月21日
  • 五月19日
  • 六月17日
  • 七月14日
  • 八月11日
  • 九月9日
  • 十月7日
  • 十一月4日
  • 十二月2日・29日

生年月日から本命宿を計算する →

次に読む

参考資料