SUKUYO 07 · Āśleṣā

柳宿りゅうしゅく

ナクシャトラアーシュレーシャー 七種の分類毒害宿 四方七宿南方朱雀

柳宿は、宿曜経が昴宿から数える27宿の7番目の宿です。経は「柳は六つの星で、形は蛇のよう」と説きます。 以下、経は宿曜経の本文と訳、現代は当サイトによる現代的な読み方です。

経柳宿に生まれた人

此宿生人,法合軟眼、饒睡性虛、梗戾嗜瞋、不伏人欺,又好布施亦好解脫,耽著情事、難得心腹

目つきが柔らかく、よく眠り、性質はつかみどころがない。頑固で怒りっぽく、人に欺かれても屈しない。施しを好み、解脱(悟り)も求める。恋愛に深くのめり込み、腹を割って話せる相手を得にくい。

軟眼
柔らかなまなざし
饒睡
よく眠る
解脫
迷いや束縛から離れること
心腹
腹心、心を許せる相手

経柳宿の日に向くこと

此宿直日,宜作剛猛斷決、伐逆除惡、攻城破賊、吞害天下

思い切った決断、反乱の討伐や悪の除去、城攻めや賊の撃破など、強い手段をとる事柄に向く。

経は各宿の日に衣を裁つとどうなるかも記しています。柳宿の日は「若用裁衣,後必遭失」——この日に衣を裁つと、後で失う。

巻下の吉凶暦では

柳宿,宜嚴拭事,是伐逆圍城、掩襲封潛、竊詭誓、詐敵人。時此宿雨者必蚊虻、苗稼滋盛

反乱の討伐、城攻め、奇襲、偽りの誓いで敵を欺くといった強硬な事に向くとしたうえで、「この宿の日に雨が降れば、必ず蚊や虻が多くなり、作物はよく茂る」という天候の言い伝えも記しています。

経毒害宿としての柳宿

経は27宿を性質で七種に分けています。柳宿は毒害宿(どくがいしゅく)で、 同じ組は参宿・心宿・尾宿です。 この組に生まれた人について経は「法合磣毒、剛猛惡性」(毒気があり、気性が荒く激しい)と書きます。

毒害宿の日は、城を囲む、敵陣を破る、賊を討つ、狩猟など、攻める事柄に向くとされる。

経ほかの章に出てくる柳宿

七曜との組み合わせ

  • 水曜日の柳宿は甘露日 — 大吉祥の日。即位や灌頂、寺の建立、受戒、経を学ぶ、出家修道によい
  • 土曜日の柳宿は羅刹日 — 何事も始めてはならず、行えば必ず災いがあるとされる日

同じ柳宿でも、曜日によって正反対の日になることがあります。

本命宿がわからない人の宿

巻上は、生まれた月日を覚えていない人が訪ねてきたら、その人が最初に触れた体の部位で宿を決めよ、と説きます。柳宿にあたるのは「歯」です。

若觸齒者則屬柳宿

七曜が犯すと災いがあるとされる宿

同じ章は、七曜(日・月と五惑星)が自分の命宿のほか、命宿から数えて4・10・13・16・20番目の宿に入ると災いがあるとします。柳宿生まれの場合は 事宿が心宿(災いを招く)、意宿が翼宿(憂いや苦しみが多い)、聚宿が危宿(財を失い、囚われる)、同宿が婁宿(家族が離れ、家が衰える)、克宿が斗宿(財や官職を失い、勢いが衰える)です。

経楊景風の注 — 中国の星座との違い

中國天文,柳八宿,主廚饍之任,南方之宿

中国の天文では柳は八星で、厨房と食膳を司る南方の宿。

出典:『宿曜経』巻上「宿曜暦経序日宿直所生品第二」(大正新脩大蔵経 第21巻 p.389a20–a25、CBETA のテキストによる)。現代語訳は当サイトによる大意です。

星空での位置と対応

ナクシャトラ
Āśleṣā(アーシュレーシャー)— 名の意味は「抱擁」
インドでの神格
ナーガ(蛇神)。経では神名がはっきりしませんが、形を蛇とする点で蛇神ナーガと通じます。
対応する星
うみへび座δ・ε・η・ρ・σ星(うみへびの頭)
二十八宿として
和名は「ぬりこぼし」。うみへび座頭部にあたり、距星(宿の基準星)はうみへび座δ星。南方朱雀の七宿の一つ
十二宮への配当
蟹宮4足(経の「分定宿直品第一」による。1宮を9足、1宿を4足に分ける)

ナクシャトラは黄道を13°20′ずつ27等分した区画で、中国の不等間隔な二十八宿とは同じ星を指すとは限りません。名の意味・神格・星は英語版 Wikipedia「Nakshatra」の一覧、距星は日本語版 Wikipedia「二十八宿」の表によります。

現代柳宿の読み方

蛇の形の宿で、インドでも蛇神ナーガの宿、名は「抱擁(からみつくもの)」。経の人物像は「柔らかい目つき」と「頑固で怒りっぽい」、「施しや悟りを好む」と「情事にのめり込む」が同居していて、矛盾を抱えた奥行きのある人として描かれます。「心腹を得難し」は、心を許す相手が少ないという意味。現代的には、一度惹かれたものに深く入り込む集中力と、それゆえの不器用さを持つ人と読めます。

柳宿の日を今の暮らしに置き換えると

決断・討伐・攻城と、強い手段をとる事柄の日。迷っていたことに見切りをつける、溜まった案件を片付けるといった用事に読み替えられます。経は衣を裁つと失うとし、新調には向かないとしています。

経の人物描写は唐代の暦占の言葉で、性格を断定するものではありません。この段落は当サイトが経の記述をもとに書いた解釈です。

柳宿から見た三九の秘法

自分の宿を「命」として27宿を順に数え、9宿ずつ三巡させたときの位置で関係を決めるのが三九の秘法です(しくみは一覧ページ)。 経は相手と交わるとき「栄・安・成・友・親を善とし、交わってよい。それ以外はみな悪い」としており、柳宿から見てこれにあたるのは15宿です。

栄えい 星宿・尾宿・婁宿
衰すい 張宿・箕宿・胃宿
安あん 昴宿・翼宿・斗宿
危き 畢宿・軫宿・女宿
成せい 觜宿・角宿・虚宿
壊かい 参宿・亢宿・危宿
友ゆう 井宿・氐宿・室宿
親しん 鬼宿・房宿・壁宿
業ごう 心宿
胎たい 奎宿

色の付いた行が、経が「交わってよい」とする関係です。その宿の日に何をするとよいかや、現代の「栄親」「安壊」などの組み合わせでの読み方は一覧ページにまとめています。

柳宿生まれになる旧暦の日

本命宿は、旧暦の各月1日に決まった宿を置き、1日ごとに次の宿へ進めて決めます(閏月は同じ数の月と同じ)。柳宿にあたるのは次の日です。

  • 正月12日
  • 二月10日
  • 三月8日
  • 四月6日
  • 五月4日
  • 六月2日・29日
  • 七月26日
  • 八月23日
  • 九月21日
  • 十月19日
  • 十一月16日
  • 十二月14日

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参考資料