SUKUYO 12 · Citrā

角宿かくしゅく

ナクシャトラチトラー 七種の分類和善宿 四方七宿東方青龍

角宿は、宿曜経が昴宿から数える27宿の12番目の宿です。経は「角は二つの星で、形は長い幢(はたぼこ)のよう。瑟室利神の宿」と説きます。 以下、経は宿曜経の本文と訳、現代は当サイトによる現代的な読み方です。

経角宿に生まれた人

此宿生人,法合善經營、饒六畜,所作事多合。又手巧,所作愜人情。只合二男

やりくりが上手で家畜に恵まれ、手がけることの多くがうまく運ぶ。手先が器用で、作るものが人の心にかなう。男子は二人に限られる。

經營
やりくり、事業を営むこと
六畜
馬・牛・羊・鶏・犬・豚
手巧
手先が器用
愜人情
人の気持ちにかなう

経角宿の日に向くこと

此宿直日,宜嚴飾、造衣裳、寶物錦繡之事,觀兵行軍、祭祀天神、賞賜將士並吉

飾り付け、衣装づくり、宝物や錦の刺繍、閲兵や行軍、天の神々の祭り、将兵への褒賞に吉。

経は各宿の日に衣を裁つとどうなるかも記しています。角宿の日は「若用裁衣,終當逃亡」——この日に衣を裁つと、ついには逃げ出すことになる。

巻下の吉凶暦では

角宿,宜嚴飾事,取雜色衣、作安膳那、服藥,及取珊瑚金銀赤銅摩尼金剛諸寶物等諸珍帛

飾る事、色とりどりの衣、安膳那(眼に差す薬)を作る、服薬、珊瑚・金銀・赤銅・摩尼・金剛などの宝物や珍しい布を手に入れることに吉。続けて、王が正装して兵を観る、天神の祭り、将兵への褒賞、花鬘や寝具を作る、歌舞や芸事を挙げ、華やかな事柄が並ぶ宿です。

経和善宿としての角宿

経は27宿を性質で七種に分けています。角宿は和善宿(わぜんしゅく)で、 同じ組は觜宿・房宿・奎宿です。 この組に生まれた人について経は「法合柔軟溫良,聰明而愛典教」(物腰が柔らかく温和で善良、聡明で経典や教えを好む)と書きます。

和善宿の日は、道場に入る、技芸を学ぶ、真言を習う、斎戒、灌頂、音楽、慶事、求婚、君主や高官への面会、服薬などに向く。

経ほかの章に出てくる角宿

七曜との組み合わせ

経はその日の曜日(七曜)と宿の組み合わせで甘露日・金剛峯日・羅刹日を定めていますが、角宿はこのどれにも挙がっていません。

本命宿がわからない人の宿

巻上は、生まれた月日を覚えていない人が訪ねてきたら、その人が最初に触れた体の部位で宿を決めよ、と説きます。角宿にあたるのは「あご」です。

若觸頦頤者則屬角宿

七曜が犯すと災いがあるとされる宿

同じ章は、七曜(日・月と五惑星)が自分の命宿のほか、命宿から数えて4・10・13・16・20番目の宿に入ると災いがあるとします。角宿生まれの場合は 事宿が虚宿(災いを招く)、意宿が房宿(憂いや苦しみが多い)、聚宿が胃宿(財を失い、囚われる)、同宿が参宿(家族が離れ、家が衰える)、克宿が壁宿(財や官職を失い、勢いが衰える)です。

経楊景風の注 — 中国の星座との違い

中國天文,角二星,主天門,東方之宿也

中国の天文でも角は二星で、天の門を司る東方の宿。二十八宿の起点とされる宿でもある。

出典:『宿曜経』巻上「宿曜暦経序日宿直所生品第二」(大正新脩大蔵経 第21巻 p.389b23–b28、CBETA のテキストによる)。現代語訳は当サイトによる大意です。

星空での位置と対応

ナクシャトラ
Citrā(チトラー)— 名の意味は「輝くもの」
インドでの神格
トヴァシュトリ(工芸の神)。経は「瑟室利」とし、一覧ではトヴァシュトリとされます。
対応する星
スピカ(おとめ座α星)
二十八宿として
和名は「すぼし」。おとめ座中央部にあたり、距星(宿の基準星)はおとめ座α星(スピカ)。東方青龍の七宿の一つ
十二宮への配当
女宮2足・秤宮2足(経の「分定宿直品第一」による。1宮を9足、1宿を4足に分ける)

ナクシャトラは黄道を13°20′ずつ27等分した区画で、中国の不等間隔な二十八宿とは同じ星を指すとは限りません。名の意味・神格・星は英語版 Wikipedia「Nakshatra」の一覧、距星は日本語版 Wikipedia「二十八宿」の表によります。

現代角宿の読み方

工芸の神トヴァシュトリの宿で、名は「輝くもの」、星はスピカ。経の人物像も「手巧(手先が器用)」「作ったものが人の心にかなう」と、作り手としての資質が中心です。この宿の日も衣装・宝物・刺繍など飾る仕事に向くとされ、インド側の神格と経の記述が同じ方向を向いています。現代的には、美しく人に喜ばれるものを形にする才がある人。「所作事多合」の通り、段取りよく物事をまとめる実務の力も読み取れます。

角宿の日を今の暮らしに置き換えると

飾る事、衣装、宝物、祭り、歌舞と、華やかな事柄がもっとも多く並ぶ日。装いを新しくする、作品を仕上げて披露する、催しに参加するといった用事に重ねやすい日です。

経の人物描写は唐代の暦占の言葉で、性格を断定するものではありません。この段落は当サイトが経の記述をもとに書いた解釈です。

角宿から見た三九の秘法

自分の宿を「命」として27宿を順に数え、9宿ずつ三巡させたときの位置で関係を決めるのが三九の秘法です(しくみは一覧ページ)。 経は相手と交わるとき「栄・安・成・友・親を善とし、交わってよい。それ以外はみな悪い」としており、角宿から見てこれにあたるのは15宿です。

栄えい 参宿・亢宿・危宿
衰すい 井宿・氐宿・室宿
安あん 鬼宿・房宿・壁宿
危き 柳宿・心宿・奎宿
成せい 星宿・尾宿・婁宿
壊かい 張宿・箕宿・胃宿
友ゆう 昴宿・翼宿・斗宿
親しん 畢宿・軫宿・女宿
業ごう 虚宿
胎たい 觜宿

色の付いた行が、経が「交わってよい」とする関係です。その宿の日に何をするとよいかや、現代の「栄親」「安壊」などの組み合わせでの読み方は一覧ページにまとめています。

角宿生まれになる旧暦の日

本命宿は、旧暦の各月1日に決まった宿を置き、1日ごとに次の宿へ進めて決めます(閏月は同じ数の月と同じ)。角宿にあたるのは次の日です。

  • 正月17日
  • 二月15日
  • 三月13日
  • 四月11日
  • 五月9日
  • 六月7日
  • 七月4日
  • 八月1日・28日
  • 九月26日
  • 十月24日
  • 十一月21日
  • 十二月19日

生年月日から本命宿を計算する →

次に読む

参考資料