SUKUYO 10 · Uttaraphalgunī

翼宿よくしゅく

ナクシャトラウッタラ・パールグニー 七種の分類安重宿 四方七宿南方朱雀

翼宿は、宿曜経が昴宿から数える27宿の10番目の宿です。経は「翼は二つの星で、形は結跏趺坐(足を組んで座る姿)のよう。利耶摩(アリヤマンの音写)の宿」と説きます。 以下、経は宿曜経の本文と訳、現代は当サイトによる現代的な読み方です。

経翼宿に生まれた人

此宿生人,法合愛騎乘鞍馬、駕馭車牛,布施喫用、觸處遊從,為人穩口語,受性愛音樂

馬に乗ることや牛車を御すことを好む。施しをし、飲食を楽しみ、どこへでも出かけて人と交わる。言葉づかいは穏やかで、生まれつき音楽を愛する。

鞍馬
鞍を置いた馬
駕馭
車や牛を操る
喫用
飲み食いと日々の費え
觸處遊從
至る所に出かけて交わる

経翼宿の日に向くこと

此宿直日,宜所作皆吉,買田宅、築牆穿塹、修農業種蒔,凡諸安久之事並吉

することはみな吉。田や家を買う、垣を築き堀を掘る、農作業や種まきなど、長く安定させる事柄はすべて吉。

経は各宿の日に衣を裁つとどうなるかも記しています。翼宿の日は「若用裁衣,後必更得財」——この日に衣を裁つと、後でさらに財を得る。

巻下の吉凶暦では

翼宿,所作皆吉,置宅垣牆、穿壕作市、作城邑、作車輿、修農、商業、種蒔、嫁娶,凡作諸安定之事並吉

する事はみな吉。家の垣、堀を掘って市を開く、町を築く、車や輿を作る、農業、商い、種まき、嫁取りなど、落ち着かせる事はみな吉とします。

経安重宿としての翼宿

経は27宿を性質で七種に分けています。翼宿は安重宿(あんじゅうしゅく)で、 同じ組は畢宿・斗宿・壁宿です。 この組に生まれた人について経は「法合安重威肅、正福德、有大名聞」(落ち着いて重みがあり、威厳を備え、福徳に恵まれ、大きな名声を得る)と書きます。

安重宿の日は、宮殿・寺院・家屋の建築、種まき、倉への収納、友人づきあい、婚姻、灌頂など、長く続けたいことに向く。遠出・借金の取り立て・酒造り・散髪・賭け事には向かない。

経ほかの章に出てくる翼宿

七曜との組み合わせ

  • 火曜日の翼宿は羅刹日 — 何事も始めてはならず、行えば必ず災いがあるとされる日

本命宿がわからない人の宿

巻上は、生まれた月日を覚えていない人が訪ねてきたら、その人が最初に触れた体の部位で宿を決めよ、と説きます。翼宿にあたるのは「左肩」です。

若觸左肩則屬翼宿

七曜が犯すと災いがあるとされる宿

同じ章は、七曜(日・月と五惑星)が自分の命宿のほか、命宿から数えて4・10・13・16・20番目の宿に入ると災いがあるとします。翼宿生まれの場合は 事宿が斗宿(災いを招く)、意宿が亢宿(憂いや苦しみが多い)、聚宿が奎宿(財を失い、囚われる)、同宿が畢宿(家族が離れ、家が衰える)、克宿が危宿(財や官職を失い、勢いが衰える)です。

経楊景風の注 — 中国の星座との違い

中國天文,翼二十二星,主府縣事,南方之宿也

中国の天文では翼は二十二星もの大きな星座で、地方の役所の事を司る南方の宿。経の「二星」との差が大きい宿の一つ。

出典:『宿曜経』巻上「宿曜暦経序日宿直所生品第二」(大正新脩大蔵経 第21巻 p.389b11–b16、CBETA のテキストによる)。現代語訳は当サイトによる大意です。

星空での位置と対応

ナクシャトラ
Uttaraphalgunī(ウッタラ・パールグニー)— 名の意味は「後の赤みを帯びたもの」
インドでの神格
アリヤマン(友誼と庇護の神)。経の「利耶摩」はアリヤマンの音写で、一致します。
対応する星
デネボラ(しし座β星)
二十八宿として
和名は「たすきぼし」。コップ座にあたり、距星(宿の基準星)はコップ座α星。南方朱雀の七宿の一つ
十二宮への配当
師子宮1足・女宮3足(経の「分定宿直品第一」による。1宮を9足、1宿を4足に分ける)

ナクシャトラは黄道を13°20′ずつ27等分した区画で、中国の不等間隔な二十八宿とは同じ星を指すとは限りません。名の意味・神格・星は英語版 Wikipedia「Nakshatra」の一覧、距星は日本語版 Wikipedia「二十八宿」の表によります。

現代翼宿の読み方

経の翼宿は、乗馬や牛車、外出、飲食、音楽と、動きと楽しみの語で描かれます。それでいて言葉は穏やかで、分類は「安重宿」。出歩いて人と交わるのが好きでも、根は落ち着いている人物像です。この宿の日は「所作皆吉」とされ、土地や家を買うなど長く続くことに特に向くとされます。現代的には、行動範囲が広く趣味が豊かで、人づきあいに角が立たない人と読めます。

翼宿の日を今の暮らしに置き換えると

する事はみな吉で、土地や家を買う、垣を築くなど安定させる事に向く日。契約や住まいに関わる手続き、長く続けたい習慣を始める日として読めます。

経の人物描写は唐代の暦占の言葉で、性格を断定するものではありません。この段落は当サイトが経の記述をもとに書いた解釈です。

翼宿から見た三九の秘法

自分の宿を「命」として27宿を順に数え、9宿ずつ三巡させたときの位置で関係を決めるのが三九の秘法です(しくみは一覧ページ)。 経は相手と交わるとき「栄・安・成・友・親を善とし、交わってよい。それ以外はみな悪い」としており、翼宿から見てこれにあたるのは15宿です。

栄えい 畢宿・軫宿・女宿
衰すい 觜宿・角宿・虚宿
安あん 参宿・亢宿・危宿
危き 井宿・氐宿・室宿
成せい 鬼宿・房宿・壁宿
壊かい 柳宿・心宿・奎宿
友ゆう 星宿・尾宿・婁宿
親しん 張宿・箕宿・胃宿
業ごう 斗宿
胎たい 昴宿

色の付いた行が、経が「交わってよい」とする関係です。その宿の日に何をするとよいかや、現代の「栄親」「安壊」などの組み合わせでの読み方は一覧ページにまとめています。

翼宿生まれになる旧暦の日

本命宿は、旧暦の各月1日に決まった宿を置き、1日ごとに次の宿へ進めて決めます(閏月は同じ数の月と同じ)。翼宿にあたるのは次の日です。

  • 正月15日
  • 二月13日
  • 三月11日
  • 四月9日
  • 五月7日
  • 六月5日
  • 七月2日・29日
  • 八月26日
  • 九月24日
  • 十月22日
  • 十一月19日
  • 十二月17日

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参考資料