星宿せいしゅく
星宿は、宿曜経が昴宿から数える27宿の8番目の宿です。経は「星は六つの星。(形と神名の部分は字句に乱れがあり、意味が確定しにくい。)」と説きます。 以下、経は宿曜経の本文と訳、現代は当サイトによる現代的な読み方です。
経星宿に生まれた人
父母生存不能孝養、死後方崇祭饗追念,亦足奴婢畜乘資產,有名聞
(この前に、争いを好み怒りを抑えられないという趣旨の句がある。)親が生きているうちは孝行できず、亡くなってから手厚く祭り偲ぶ。使用人・家畜・乗り物などの財産に恵まれ、名も知られる。続けて、一生のあいだ神廟への祈りを好むとも記す。
- 孝養
- 親孝行
- 祭饗追念
- 祭って供え物をし、故人を偲ぶ
- 奴婢畜乘
- 使用人・家畜・乗り物
- 名聞
- 名声
経星宿の日に向くこと
此宿直日,宜種蒔雜物亦宜種五穀、宜修宅舍祭祀先亡
さまざまな作物や五穀の種まき、家の修理、先祖の祭祀に吉。
経は各宿の日に衣を裁つとどうなるかも記しています。星宿の日は「若用裁衣,後必損失」——この日に衣を裁つと、後で損をする。
巻下の吉凶暦では
七星宿凡諸種蒔皆吉,唯不宜種虋。宜種五穀等、種芸薹,又宜修宅、祭先亡、將五穀入宅,作諸住定業並吉,亦宜修理鬢髮
巻下は星宿を「七星宿」と呼びます。どんな種まきにも吉だが、虋(穀物の一種)だけは植えない方がよい。五穀や芸薹(アブラナ)を植える、家を修理する、先祖を祭る、五穀を家に運び入れる、定住のための仕事、髪を整えることに吉とします。
経猛悪宿としての星宿
経は27宿を性質で七種に分けています。星宿は猛悪宿(もうあくしゅく)で、 同じ組は張宿・箕宿・室宿です。 この組に生まれた人について経は「法合兇害猛殺,宜捨身出家作沙門」(荒々しく人を害しやすいので、出家して僧になるのがよい)と書きます。
猛悪宿の日は、道を守り要害を設ける、武器を作る、裁き、狩猟、天や神を祭ることなどに向くとされる。
経ほかの章に出てくる星宿
七曜との組み合わせ
- 土曜日の星宿は甘露日 — 大吉祥の日。即位や灌頂、寺の建立、受戒、経を学ぶ、出家修道によい
本命宿がわからない人の宿
巻上は、生まれた月日を覚えていない人が訪ねてきたら、その人が最初に触れた体の部位で宿を決めよ、と説きます。星宿にあたるのは「うなじ」です。
若觸項者則屬星宿
七曜が犯すと災いがあるとされる宿
同じ章は、七曜(日・月と五惑星)が自分の命宿のほか、命宿から数えて4・10・13・16・20番目の宿に入ると災いがあるとします。星宿生まれの場合は 事宿が尾宿(災いを招く)、意宿が軫宿(憂いや苦しみが多い)、聚宿が室宿(財を失い、囚われる)、同宿が胃宿(家族が離れ、家が衰える)、克宿が女宿(財や官職を失い、勢いが衰える)です。
経楊景風の注 — 中国の星座との違い
中國天文,星七星,主衣服,南方之宿也
中国の天文では星は七星で、衣服を司る南方の宿。
出典:『宿曜経』巻上「宿曜暦経序日宿直所生品第二」(大正新脩大蔵経 第21巻 p.389a26–b04、CBETA のテキストによる)。現代語訳は当サイトによる大意です。
星空での位置と対応
- ナクシャトラ
- Maghā(マガー)— 名の意味は「力あるもの」
- インドでの神格
- ピトリ(祖霊)。経の「薄伽」は一覧で張宿の神とされるバガに音が近く、祖霊ピトリとは一致しません。
- 対応する星
- レグルス(しし座α星)
- 二十八宿として
- 和名は「ほとおりぼし」。うみへび座心臓部にあたり、距星(宿の基準星)はうみへび座α星(アルファルド)。南方朱雀の七宿の一つ
- 十二宮への配当
- 師子宮4足(経の「分定宿直品第一」による。1宮を9足、1宿を4足に分ける)
ナクシャトラは黄道を13°20′ずつ27等分した区画で、中国の不等間隔な二十八宿とは同じ星を指すとは限りません。名の意味・神格・星は英語版 Wikipedia「Nakshatra」の一覧、距星は日本語版 Wikipedia「二十八宿」の表によります。
現代星宿の読み方
インドでは祖霊(ピトリ)の宿とされ、経でもこの宿の日は「先亡を祭る」日、人物像にも「親の死後に手厚く祭る」「神廟に祈ることを好む」とあり、先祖とのつながりが繰り返し出てくる宿です。名の意味は「力あるもの」、対応する星は獅子の心臓レグルス。気性の激しさが書かれる一方で、財と名声には恵まれるとされます。現代的には、家や伝統を背負う意識が強く、感情の起伏を自分で扱う工夫が要る人と読めます。
星宿の日を今の暮らしに置き換えると
種まきと家の修理、先祖の祭りの日。墓参りや法事、家の手入れ、家族の記録を整理するといった、家と先祖に関わる用事に向く日と読めます。
経の人物描写は唐代の暦占の言葉で、性格を断定するものではありません。この段落は当サイトが経の記述をもとに書いた解釈です。
星宿から見た三九の秘法
自分の宿を「命」として27宿を順に数え、9宿ずつ三巡させたときの位置で関係を決めるのが三九の秘法です(しくみは一覧ページ)。 経は相手と交わるとき「栄・安・成・友・親を善とし、交わってよい。それ以外はみな悪い」としており、星宿から見てこれにあたるのは15宿です。
色の付いた行が、経が「交わってよい」とする関係です。その宿の日に何をするとよいかや、現代の「栄親」「安壊」などの組み合わせでの読み方は一覧ページにまとめています。
星宿生まれになる旧暦の日
本命宿は、旧暦の各月1日に決まった宿を置き、1日ごとに次の宿へ進めて決めます(閏月は同じ数の月と同じ)。星宿にあたるのは次の日です。
- 正月13日
- 二月11日
- 三月9日
- 四月7日
- 五月5日
- 六月3日・30日
- 七月27日
- 八月24日
- 九月22日
- 十月20日
- 十一月17日
- 十二月15日
次に読む
参考資料
- CBETA 中華電子佛典協會「文殊師利菩薩及諸仙所說吉凶時日善惡宿曜經(大正新脩大藏經 第21冊 No.1299)」 不空訳・楊景風注の本文。各宿の記述、七種の分類、三九の秘法、本命宿の求め方の引用はすべてこのテキストから写しています。
- 国立天文台 暦計算室「暦Wiki/インド暦/Naksatra」 ナクシャトラと漢訳の宿名の対応、黄道を13°20′ずつ27等分すること、牛宿=Abhijit(ベガ)の説明。
- 国立天文台 暦計算室「暦Wiki/二十八宿」 二十七宿には牛宿がないこと、旧暦各月の朔日の宿の表、貞享暦以降の暦注は二十八宿になったことの確認に使っています。
- Wikipedia 日本語版「二十八宿」 各宿の現代星座での位置と距星の一覧、森田龍僊『密教占星法』(1941年)への言及。
- Wikipedia 英語版「Nakshatra」 各ナクシャトラの名の意味、ヴェーダの神格、対応する星(Basham 1954 による)。