SUKUYO 02 · Rohiṇī

畢宿ひっしゅく

ナクシャトラローヒニー 七種の分類安重宿 四方七宿西方白虎

畢宿は、宿曜経が昴宿から数える27宿の2番目の宿です。経は「畢は五つの星で、形は車を半分にしたよう。鉢闍鉢底神(プラジャーパティの音写)の宿」と説きます。 以下、経は宿曜経の本文と訳、現代は当サイトによる現代的な読み方です。

経畢宿に生まれた人

此宿直生人,法合多財產、足男女,性聰明、好布施、有心路、省口語、心意不翻動、行步如牛王、有容儀

財産が多く子に恵まれる。聡明で施しを好み、考えが深く、口数は少なく、心がぐらつかない。歩みは牛の王のようにどっしりとして、風采がある。

心路
考えの筋道、思慮
省口語
口数を控える
不翻動
ひるがえらない、ぶれない
牛王
牛の群れの王。堂々とした歩みのたとえ

経畢宿の日に向くこと

此宿直日,宜農桑種蒔、修理田宅、通決溝渠、修橋道作諸安久之事,不宜放債及出財納穀米

農耕・養蚕・種まき、田や家の修理、用水路を通す、橋や道の修理など、長く保たせる仕事に吉。金を貸すこと、財を出すこと、穀物を納めることには向かない。

経は各宿の日に衣を裁つとどうなるかも記しています。畢宿の日は「若用裁衣,必多饒事務」——この日に衣を裁つと、用事が増える。

巻下の吉凶暦では

畢宿,宜農桑種蒔、修田宅嫁娶、作厨舍、作食、作畜生舍、通決渠河、修橋梁、作諸安定之事、作衣服並吉。不宜取債放債。宜納穀及酒食雜物。不宜生財

農耕・田宅・水路・橋に加え、嫁取り、台所や家畜小屋を建てる、食事を作る、衣服を作ることを挙げます。借金の取り立てと貸し付けは不可。巻上では穀物を納めるのは不向きとしていたのに、巻下は「宜納穀(穀物を納めるのによい)」とし、上下巻で言うことが逆になっている箇所です。

経安重宿としての畢宿

経は27宿を性質で七種に分けています。畢宿は安重宿(あんじゅうしゅく)で、 同じ組は翼宿・斗宿・壁宿です。 この組に生まれた人について経は「法合安重威肅、正福德、有大名聞」(落ち着いて重みがあり、威厳を備え、福徳に恵まれ、大きな名声を得る)と書きます。

安重宿の日は、宮殿・寺院・家屋の建築、種まき、倉への収納、友人づきあい、婚姻、灌頂など、長く続けたいことに向く。遠出・借金の取り立て・酒造り・散髪・賭け事には向かない。

経ほかの章に出てくる畢宿

七曜との組み合わせ

  • 月曜日の畢宿は甘露日 — 大吉祥の日。即位や灌頂、寺の建立、受戒、経を学ぶ、出家修道によい

本命宿がわからない人の宿

巻上は、生まれた月日を覚えていない人が訪ねてきたら、その人が最初に触れた体の部位で宿を決めよ、と説きます。畢宿にあたるのは「額」です。

若先觸額者則屬畢宿

七曜が犯すと災いがあるとされる宿

同じ章は、七曜(日・月と五惑星)が自分の命宿のほか、命宿から数えて4・10・13・16・20番目の宿に入ると災いがあるとします。畢宿生まれの場合は 事宿が軫宿(災いを招く)、意宿が井宿(憂いや苦しみが多い)、聚宿が尾宿(財を失い、囚われる)、同宿が虚宿(家族が離れ、家が衰える)、克宿が氐宿(財や官職を失い、勢いが衰える)です。

経楊景風の注 — 中国の星座との違い

中國天文畢八星,主邊兵,西方之宿也

中国の天文では畢は八星で、辺境の兵を司る西方の宿。

出典:『宿曜経』巻上「宿曜暦経序日宿直所生品第二」(大正新脩大蔵経 第21巻 p.388c15–c21、CBETA のテキストによる)。現代語訳は当サイトによる大意です。

星空での位置と対応

ナクシャトラ
Rohiṇī(ローヒニー)— 名の意味は「輝く乙女」
インドでの神格
プラジャーパティ(創造神)。経の「鉢闍鉢底」はプラジャーパティの音写で、一致します。
対応する星
アルデバラン(おうし座α星)
二十八宿として
和名は「あめふりぼし」。おうし座頭部(ヒアデス)にあたり、距星(宿の基準星)はおうし座ε星。西方白虎の七宿の一つ
十二宮への配当
牛宮4足(経の「分定宿直品第一」による。1宮を9足、1宿を4足に分ける)

ナクシャトラは黄道を13°20′ずつ27等分した区画で、中国の不等間隔な二十八宿とは同じ星を指すとは限りません。名の意味・神格・星は英語版 Wikipedia「Nakshatra」の一覧、距星は日本語版 Wikipedia「二十八宿」の表によります。

現代畢宿の読み方

「牛の王のような歩み」という比喩がこの宿の核です。口数が少なく心がぶれない、という記述と合わせると、急がず、決めたことを時間をかけて形にしていく人と読めます。安重宿に分類され、この宿の日は田畑・家・橋など「長く保たせるもの」に向くとされる点も、同じ方向を指しています。反対に、お金を貸す・出すのは不向きとされ、手元を固める堅実さが強調されています。

畢宿の日を今の暮らしに置き換えると

田畑・家・橋など長く保たせるものの日。家の修繕や長く使う家具選び、積み立ての開始など、時間をかけて効いてくる用事に向く日と読み替えられます。お金を貸す・出す用事は避ける日です。

経の人物描写は唐代の暦占の言葉で、性格を断定するものではありません。この段落は当サイトが経の記述をもとに書いた解釈です。

畢宿から見た三九の秘法

自分の宿を「命」として27宿を順に数え、9宿ずつ三巡させたときの位置で関係を決めるのが三九の秘法です(しくみは一覧ページ)。 経は相手と交わるとき「栄・安・成・友・親を善とし、交わってよい。それ以外はみな悪い」としており、畢宿から見てこれにあたるのは15宿です。

栄えい 觜宿・角宿・虚宿
衰すい 参宿・亢宿・危宿
安あん 井宿・氐宿・室宿
危き 鬼宿・房宿・壁宿
成せい 柳宿・心宿・奎宿
壊かい 星宿・尾宿・婁宿
友ゆう 張宿・箕宿・胃宿
親しん 昴宿・翼宿・斗宿
業ごう 軫宿
胎たい 女宿

色の付いた行が、経が「交わってよい」とする関係です。その宿の日に何をするとよいかや、現代の「栄親」「安壊」などの組み合わせでの読み方は一覧ページにまとめています。

畢宿生まれになる旧暦の日

本命宿は、旧暦の各月1日に決まった宿を置き、1日ごとに次の宿へ進めて決めます(閏月は同じ数の月と同じ)。畢宿にあたるのは次の日です。

  • 正月7日
  • 二月5日
  • 三月3日・30日
  • 四月1日・28日
  • 五月26日
  • 六月24日
  • 七月21日
  • 八月18日
  • 九月16日
  • 十月14日
  • 十一月11日
  • 十二月9日

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参考資料